おりがみ古典資料の至宝、「千羽鶴折形(せんばづるおりかた)」の最後の難問として存在するのが、「瓜の蔓」だと思います。理由は、この完成形と、用紙の切り方図の間には、かなり大きな齟齬(そご=食い違い)があるからです。
なおそんな齟齬は、この「瓜の蔓」だけではなく、多数の作例にそれが見られます。例
えば「八橋(やつはし)」、「昔男(むかしおとこ)」、「呉竹(くれたけ)」、「九万里(くまんり)」、「四つの袖(よつのそで)」、「鼎(かなえ)」、「早乙女(さおとめ)」、「荘子(そうじ)」、「杜若(かきつばた)」、そしてここで取り上げた「瓜の蔓(うりのつる)」と、全49種の作例中、実に10点に明らかな(完成形と展開図との不一致)が見られるのです。(「千羽鶴折形」についてまだご存知でない方は、「おりがみ新発見3 日貿出版社」をご参照ください。)
でも、まあ9種については、単純な間違いで、…それはこのような(連鶴)の考案者魯縞庵(ろこうあん)さんと、絵師、あるいは著者秋里籬島(あきさと りとう)さんとの間の(情報伝達のミスか、勘違い)でしょう。
そして「瓜の蔓」についても同様な問題だろうと思います。とまあそのような判断からこれをむしろ(楽しいパズル)と考えて、私なりに解答を得まして、いくつかの自著にそれを示しました。
ところがその後で、岡村昌夫先生から、原本の展開図にきわめて近い解答が示されて、私は「ああ!そうだったのか!」と、すっかり感激して、自身の解答を否定してしまいましたが、…その数年の後、改めて原本完成図をじっくりと眺めた結果、この完成形図を優先して考えるなら、私の解答がやはり正しいのではないか?と、そう思うところと成りました。
とにかく、原本と、岡村先生の(シンメトリーに捉われない)見事な解答と、私の(かなり大幅な変更)による解答とを、下にご紹介しますので、ご興味のある方はどうぞ考えてみてください。
ともあれおりがみって、こんな例から見ても、実に高級にして興味深いパズル遊びなんですよ!
原本での(瓜の蔓)です。 日本折紙協会発行の(復刻版)から。 |
子鶴の部分を、下側にして描き直した 図です。ここで、子鶴の姿をよく見てい ただくと、それは完全に(独立)した形 でしょう!もしこのことを最優先にした とすれば、岡村先生のものは、微妙なが らこの完成図とは異なっているのです! 手前の(子鶴)の羽の先を見て。 |
岡村先生の解答は、上図のようになります。それに 対して、左上のX図の私の解答では、ほぼ原本の完成図 と等しくなっているのです。なお、(ざぶとん折り)が 描き落とされたものは、実は他にも有るのですよ! |
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