この資料のことを少しだけ具体的に言いますと、足立一之(あだち かずゆき)という実に多趣味の江戸の人物が、興味の赴くままに様々な書に触れ、それらからの抜き書きを、実に230余冊のノートに記録して残したもので、その記録の最後の巻にでしょうか、弘化2年(1845)とあるそうです。そこまでには、きっと永い収集の年月があったことでしょう。
ところでその(21巻から50巻まで)を「かやら草」と題しており、その中の27巻と28巻、すなわち「かやら草」の巻七と巻八の中に(おりがみの筆写物)を残してくれたのです。(“かやら草”というのは実際の植物の名ではなく、"なにやら、かやらと種々(くさぐさ)”を記録した、の意からのネーミングでしょう。)
さてこの記録には、かなり手の込んだ作品の折り方が36点ほど、上手な絵で描かれているのですが、巻八のおわりに『…孔雀(=くじゃく)、蟷螂(=かまきり)、ふくらすずめ、ふぐ、狐嫁入り、などの作例があるが、その折り方はよく分からないので略します。(以上は意訳です。)』とあって、最初の2点、つまり「くじゃく」と「かまきり」が、私たちに残された楽しい(なぞなぞ)でした。 ほかの作例は、現在は一応伝承作品などから当たりが付いていますので、なぞなぞの度合いは低い。
ともあれ、そんな折り方不明の5点について、私なりの解答は既に得ております。そして「かまきり」と「狐嫁入り」については既に「ミニチュア・ボックス」と「久しぶりにミニチュア・ボックス」の項でご紹介しました。
で、ここでは「くじゃく」について私の解答を写真紹介します。 もとよりこれは私なりの解答であって、足立さんが目にされた折り方と同じかどうか?には、まったく何の証明も出来ません。でもとにかく、私にはとても楽しいなぞなぞ解き、そう!パズルでもありました。(全5作例共に、まったくの私の推測解答です。そして「ふぐ」と「ふくらすずめ」については、後日解説したいと思います。)
なお以上について、詳しく知りたい方は、拙著「おりがみ新発見3 古典から最新作まで300年の絵巻 2005年 日貿出版社」をご覧くだされば幸いです。もっとも、これ以降、新しい発見など続いておりますから、この著書に示したものは、2005年時点でのなぞとその解答ということです。
これは(正方形1枚)からの(不切折り)です。 でも古人は何の拘りもなく(はさみ)を使いますか ら、この折り方は足立さんが見たものとは違うこと でしょう。だから(なぞ)はまだ解けていない?と 思うと、ああ、まだ楽しみは残っているようだ! |
これは(ミニチュア・ボックス)とし て既に紹介した「蟷螂(かまきり)」 でしたね。 (切り込み)を使ったこの私の解答例 なら、あるいは正解に近いかも知れない と思うも、まだ違う解答があるかもね? |
初めてのコメント失礼いたします。今から20年ほど前、当時小学生だった私が何度も挑戦していたのが、ご著書である『最新・折り紙のすべて』(ai・books)に掲載されていた「かやら草」「折方手本忠臣蔵」でした。学校も家も面白くなかった私にとって、唯一没頭できる楽しみが折り紙でした。本と見比べながらひとつひとつ折り上げてゆく喜びは、何ものにも変えがたいものでした。
返信削除その後段々折り紙は手に取らなくなってしまいましたが、今日偶然懐かしくなり、「かやら草」で検索してみたところ、こちらの記事を読むことができました。今でも発信していてくださるとは!20年間のお礼をここで申し上げます。本当に、あの本を作ってくださってありがとうございました。
2017 12/20に載っている七福神折ってみたくて色々本を探しているのですが、折図を見つけることができません。「おりがみおとぎのくに」の七福神は折ってみました。これより後に工夫された七福神のシンプルな二色遣いのセンスの良さに感服して是非作ってみたいのですが、悲しいことに出来上がりを見て作る能力がありません。折図が載っている本を教えていただけませんか。
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