前に「サイコロ、すなわちキューブの魅力」の項で、最古級の資料「欄間図式(らんまずしき)享保19(1734)」を紹介しましたが、そこに「玉手箱」という作例の完成図が紹介されているのも紹介しました。
ところでここに「欄間図式」から115年後に「絵本児雷也豪傑譚 嘉永2(1849)」という江戸の資料の(袋絵)に、(切り子型)の「玉手箱」が有ることが、岡村昌夫先生により発見されました。(東京文京区の礫川浮世絵美術館蔵 松井英男館長)
なおつい先年、やはり岡村先生の手で、幕末期、山陽地方に居られた箏曲の教授、葛原勾当氏(この“勾当”というのは、盲目の箏曲指導者の階級名)という方が、おりがみ名人でもあられ、人形や動物などの作品の他に、(1:5の長方形6枚)からの「玉手箱」を(折り残して)おられたことを発見された。
(この方のことは、作家太宰治が、当人が書き残した「葛原勾当日記」を脚色して「盲人独笑」の題で作品発表している。その“はしがき”及び“あとがき”に、そのお人柄などが解説されていて興味深い。)
さて嬉しいことに、おりがみの先達本多功氏の昭和の初期のご著書の中には、一般的に知られた(正方形6枚で、3等分折りのかざぐるまから作る玉手箱)と合わせ、上記の2種とで計3種の「玉手箱」を折り方紹介されておられるを知りました。
こんなありがたい情報をご教示くださった、おりがみ歴史研究の第一人者のお一人であられた高木智氏は、また別に、これら3種とも異なる(4番目のもの)と私の目に映った絵の(浮世絵資料)を見せてくださいました。
それは「女用教訓 絵本花の宴 宝暦2(1752)洛東遺宝館(京都)所蔵」の中に、(側面に❌印の無い)「玉手箱」の絵が有ることで、それの解明を試みたことから、さらに2種の折り方を思い付きましたので、計5種の作例となったのです。そしてそれはこれで止まらず、さらなるキューブ形へとライフワークの夢を広げてくれたのです。
下の写真でそれらの現在までの諸形を見てください。
「玉手箱」として伝えられた三種の造形 |
藤本折りでの解法 |