2017/04/02

二つのお話

二つのファンタジー

 数年前から「昔、始まりの物語」という大長編ファンタジーを書いています。どんな結末を迎えるかといった、大まかな構成プランは頭の中に在りますが、…百人以上のキャラクターが登場する筈ですから、彼ら、彼女らがどんな行動を取るかの予測が出来ず、…まあいつ完成するのかは、今の時点では私自身判りません。

 ともかく次々と湧き出る妄想に身を任せて書き続けているわけですが、言葉を変えて言えば “見果てぬ夢” として永く楽しみたいとの思いもあるのですね。
 おとぎ話やファンタジーの夢を見ることは青年期からのもので、これまで1,2具体的に書いたことがありました。そしてそれにもっと熱中したかったのですが、おりがみ図書出版の依頼が次々と来て、…でも今にして、冒頭の “ごあいさつ” で申しましたような世の中の変化が起きたことで、今その夢に熱中出来る状況になったわけです。

 しかし、時間的なゆとりが生まれると逆に、登場キャラクターたちの行動力は鈍るようで、筆は滞りがちですが、…まあこんなふうに夢を言いふらすことで、気持ちにプレッシャーを与えたいとの思いが、どうやら心の内にあるのでしょうね。

 さて今言いました大長編のずっと前に「かばのポポタン」という短編のファンタジーを書きました。当時お世話になっていた、敬愛する編集長のお一人に見ていただき、ほめていただけたことで大いに自信も湧きました。が、この原稿がどこかに雲隠れして、10年探し続けていますが、未だ見付かりません。山のように積み重なった雑物の中に紛れ込んでいる筈で、いつかは出てくるでしょうが、このさい記憶を辿りながら、リライトを試みてみました。

 ともあれ、この2編のプロフィールをご紹介してみます。興味を持ってくれたらうれしいことです。



長編ファンタジー「昔、始まりの物語」



 今から、たかだか千六、七百年前のことなのに、ヒミコという女王(日の巫女)はどこに居たのか? 専門学者でも諸説に分かれ未だ定かではない?…なんて聞けば不思議感は深まり、ロマンを覚えるのですね。(私のファンタジーには、二人のヒミコが登場する予定!?)

 元より門外漢の身には、考証など出来よう筈もなく、ただただ空想と妄想の翼をはばたかせるだけですが、そもそもこの女王の名が歴史に現れた資料が、中国魏(ぎ)の国志の中の(倭人伝)とて、…たくさんの(ヤマタイ国)探索の説が発表されていて、それらを読んだ中で、繰り返し(魏志倭人伝)の5文字を目にして来ました。

 さてそこでこの(倭)は、わが国名であったと思うのですが、それがいつしか(ヤシマ)(ヤマタイ)(ヤマイチ)(ヤマト)(アキツシマ)(シキシマ)(ニッポン)、…などと変えられてきたことも、思えば不思議な話です。(ワ)って良い名と思っています。でもこの名を付けたのは、倭、それとも魏? ワは「和」とも「輪」とも成れます。

 また(ニッポン)なのか(ニホン)なのか、はたまた(ジパング)(ジャパン)とは、…マルコ・ポーロはこの呼び名を、どこから持って来たのか???(ワがヤマトに変えられたのは、天武天皇のときで、ヤーウマト=“神の民”の意とのアラム語から来ているとの加治将一氏の説に驚嘆させられた。(「失われたミカドの秘紋―祥伝社文庫」より。)

 一方中国の歴史で最もわくわくさせられるのが(三国志)。魏、呉、蜀の3つの国の手に汗握る興亡。その覇者となった(魏)の文字の不思議さ! 分解して(委ねる鬼)とは? これに対して(倭)は(人に委ねる)?
 はて? だれが何を委ねたというのだろう?…かくのごとく妄想は広がって止まらない。

…とまあ、こんな妄想から始まって(鬼)や(人)や、それに(精霊)なども絡むストーリイを思い付いたというわけなのです。

(ちょっと講釈を。三国志を三国史と記すと、朝鮮の新羅、高句麗、百済の三国の興亡を指すようです。…実はこの数年、テレビで放映してくれる韓国の歴史ドラマに大いに興味をひかれて、たくさん見てきて少々詳しくなった???のですよ。)

 話は変わります。昨今「縄文(ジョウモン)時代」の人々の暮らしの姿が次々と詳らかにされてきて、これまで教わってきた原始的で厳しい姿は一変され、きわめて豊かで平和に満ちたものであった実態が判ってきたようですね。
 こんな事実は海外の歴史学者をも驚かせ『1万年以上の永きにわたり、平和を保ってきた人々の存在は、世界の人類史に類を見ない!』と言わしめた。

 ビバ!ジョーモン時代! 平和で、豊かな食生活を楽しみ、自然をしっかりと守る美しい協同体! そんな楽園を舞台背景にしたファンタジーを!…これも動機。

 さて話はまたころっと変わり(世界3大ファンタジー)として掲げられるのは、「指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)」、「ナルニア国物語」、「ゲド戦記」だと聞きました。
 でも今では空前のヒットとなった「ハリー・ポッター」を加えなければならないでしょうから、(4大ファンタジー)でしょうか。

 さてさてこれらのファンタジーすべてに描かれているのが(悪との対決)です。ではこの(悪)とは何でしょう? 征服欲、支配欲、独占欲、…そんなおぞましい欲に突き動かされる魔物のような存在。それは人間の凄まじい性(さが)のひとつか? そしてこんな欲は、今はなお一層ぶ厚く世界を覆っていますよね。そしてその後から発明された(金・かね)という恐ろしいもの。そしてそれをだれよりも多く獲得したいとの狂おしいまでの欲望。これ程悪を生むものは他にないようだ。

 そんな悪の欲望とはまったく無縁な者だ、なんてことを言う自信はまったくありませんが、…私には悪とは繋がらないだろう?=別種の欲があります。それは知りたい欲です。

 狩猟、漁労、採集、そして果樹栽培で、豊かに平和に1万年も暮らして来られたのに、何で支配欲のような悪が発生したのだろう?…そんなことを知りたい欲。

 そんな妄想が、「昔、始まりの物語」を思い立ったもうひとつの動機です。4部か5部くらいの構成にしたいと、漠然と考えていますが、今はまだ第1部のみしか仕上がっていません。でも、とびとびにエピソードは結構書いていますから、完結は出来るでしょう。かくてこれから何年も楽しむつもりです。以上がまったくの妄想に終わってしまわない証拠として、その(出だしの一部)をご披露します。

ページ右上ebooks欄「昔、始まりの物語」より、PDFでご覧いただくことができます。



短編ファンタジー「かばのポポタン」

 河馬(かば)という生物は、あのゴッツイ体型の印象から、がさつで粗暴などうぶつのように思われていますよね。でもそれって本当のことなんだろうか? そんな疑問を抱いたことが動機で書いたファンタジーです。

 最近得た知識では、あの素晴らしい生物(イルカ)の、その親類にあたるのが、なんとあの “かば” だとか!

 良い作品だとの自負はあるのですが、…なにしろ今は行方不明とて、…リライトしてみたものでご紹介してみます。「昔、始まりの物語」のように大上段にかまえたものではなく、少々マンガチックなものですよ。

 あっそれから、これだけはしっかりと言っておきたいことですが、「ハリー・ポッター」が世に出るはるか前に書いたこの私のファンタジーには、恰幅のいい動物園の園長さんが出てきますが、その人の名は “デプリー・ポッター” さんです。

ページ右上ebooks欄「かばのポポタン」よりPDFでご覧いただくことができます。

*前後編二回に分けて掲載いたします。

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